革新者

改善(improvement)とは現状の基本路線を延長線上で悪いことを善くすること、革新(innovation)とは現状の基本路線を否定して新たな(善い)ものを生み出すことです。

 

改善と革新は似て非なるものです。どちらも悪いことを善くする点では同じですが、改善は現状の基本路線を肯定し、革新は現状の基本路線を否定する点が異なります。

 

最近は、社会環境の変化が激しく単なる現状路線の延長での改善では対応できず革新が強く求められていますが、革新を起こす革新者はどのように育成すれば良いのでしょうか。残念ながら、私は革新者の育成は難しいのではないかと考えています。

 

それどころか、革新者は基本路線を変えようとするので、保守的な改善者からの攻撃にさらされることが一般的です。それでは、革新者を保護すれば育成できるかと言うとそうでもありません。なぜなら、どんな抵抗に遭っても革新できる力が無ければ革新者にはなれないからです。

 

『働かないアリに意義がある』(長谷川英祐 著)に、『お利口なアリではなくおバカなアリが餌への近道を発見する』との紹介がありました。人間社会でも、おバカさん(現状に適応しない人?)の中から革新者(innovator)が生まれると思います。Steve Jobs”Stay hungry, stay foolish”と言っています。

 

補足)

本屋で、タイトルに興味を持ち買いました。何故、生物学などをやるのかと思っていましたが、結構面白いです。人間の世界では、『アリとキリギリス』のような寓話で、アリの用に一生懸命働かないとキリギリスのように冬が越せなくなるような脅迫が広まっています。子供には分かりやすいかも知れませんが、大人までそれを信じているのが怖いです。本によると、地上で見かける何十倍ものアリが巣穴(コロニー)にいて、地上のアリは忙しそうに働いているようにみえますが、7割のアリは普段は何もしておらず、1割のアリは一生働かないとのことです。何故、働かないかと言うと、あるアリが餌を見つけた時に応援を求めるためには何もしていないアリの存在が重要なのです。また、地上のアリが全滅した時に交代するアリが重要なのです。つまりコロニーを長期的に存続させるためには、余裕(働かないアリ)が重要だそうです。アリが餌を見つけた時、巣穴に応援を求めに帰りますが、アリは言葉がしゃべれないのでどうやって仲間を餌場に連れて行くかが問題です。触手をつかって(手をつないで)連れて行く方法もありますが、それではせいぜい数匹しか連れて行けないので非効率です。そこで、餌を見つけたアリはフェロモンを撒きながら巣穴に戻り、応援のアリはそのフェロモンに従って餌場に行くとのことです。しかし、中にはフェロモンに従わずに道に迷うおバカなありがいて、このおバカなありが偶然近道を発見することがあるそうです。人間の世界でも常識に忠実な人達だけだと革新は起こせないかも知れないと思いました。私の人生を振り返ると、私もおバカなアリだったかなと思います。話しは変わりますが、ミツバチがどのように仲間を餌場(お花畑)につれて行くかについても紹介されていました。お花畑を見つけたミツバチは巣に戻って8の字ダンスを踊るそうです。8の字の方向でお花畑の方向を示し、回転数で距離を示しているとのことで、これを発見したスイスの学者がノーベル賞を受賞したそうです。